映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マイケル・チミノ監督「ディア・ハンター」627本目

これもベトナム戦争の映画だったんですね。
「親愛なるハンター」じゃなく「鹿ハンター」だということは事前になんとかわかったけど、その先が真っ白でした。ロバーデニーロが出てくるってことで、アクの強い映画だと覚悟してましたが、予想を超える壮大なドラマで、感動しました。

アメリカなのに、なぜかロシア民謡で踊る町の人々。ロシア移民の町が舞台なのだということは、wikiを見てやっとわかりました。その前提がそもそも複雑です。彼らはどんな気持ちで、敵と戦うんでしょう?

バーデニーロ演じるマイケルは、たくましくて人間的で、非情な世界の中で救いです。
彼が傷ついて帰ってきて、それでも前を向いて歩いていることで、映画を最後まで見ていられます。
でも精神的に耐えられなかったニックも、身体の一部を失ったスティーブンも、愛しく感じます。
お葬式の夜が切なくて暗いけど、生き残った人たちの生きる意志が感じられるのと、最後の音楽がとても優しいのとで、見ている人たちは涙を拭いて映画館を出て行ける、という感じがします。

それにしても戦争って狂気だ。こんな映画がちゃんと評価されて賞をとって、たくさんの人が見たのに、また戦争をしたがる人がいるんだな。

それにしても、どうして5人の「Deer Hunters」じゃなくて「The Deer Hunter」なのか?群像劇のようだけど、主役はマイケルだからかな。