映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ビリー・ワイルダー監督「情婦」636本目

どんでん返しに次ぐどんでん返し。真実はいったい何だったのか?
「情婦」とは誰のこと?原題は「Witness for the Prosecutor」、日本語は「検察側の証人」なんだけど。

そうか、そう来たか…。最後の5分間に、2回全体がひっくり返って、さらに大転換があって、映画は驚いている観客を置いて終わってしまいます。で、画面に「結末を人に話さないでください」という文字が。むかしロンドンでアガサクリスティの「マウストラップ」の舞台を見たときみたい。してやられた、という快感です。

日常のなかの人物描写やどんでん返しの見事さは、アガサクリスティの原作によるもの。
冒頭は、なんだか棒読みっぽい(イギリス英語ってそう聞こえることがある)舞台のお芝居みたいな感じ。1957年といえばかなり昔ではあるけど、なんとなくちょっと堅い。
ゆっくりゆっくりと、一見普通のやりとりを描いているようで、じっくりと伏線が引かれていきます。

ビリー・ワイルダーが撮ると、「あーあ」感のある終わりになってしまうけど、他の監督が撮ったらどんな感じなんだろうな。

もともと、ビリーワイルダーマレーネ・ディートリッヒというベルリン的な二人の組み合わせが見てみたくて借りたんだけど、マレーネもう50代、凛としてカッコいいけど、もう若くない女性の想いを演じていて、ベルリン時代を感じさせる映画ではないです。

いやほんとに、期待以上に面白かったです。