映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョン・スタージェス 監督「大脱走」646本目

1963年作品。これもまた長い、172分。

スティーブ・マックイーンは、目立ちたがりなスター。
ほかにも個性的な登場人物がたくさんいるので、この映画では出番は少ないですが、やんちゃで熱くて清潔な姿が印象に残ります。

しかし、この映画は私にはあまり楽しめません。
ドイツ軍の捕虜になっても脱走できると思って試み続ける大人たちってのが、すごいなぁと思うけど心情的には私とは遠い。毎日人が殺されてるような施設ではないのに、どうしてとどまって戦争が終わるのを待たずに、一刻も早く逃げ出そうとして命を落とすんだろう?…そういうたくましさというか、怖い物なしの強気さが、まぶしいような、ぴんと来ないような。男の子たちか、この人たちは。

外に出てからは、もしかしたらと思える場面もあって楽しいところもあります。
というか、脱出準備や脱出までのプロセスが、イメージしていたドイツ軍と比べて簡単で、私だったら「そもそも無理!」と諦めてしまいそうなレベルなんですね。

そして、かなり悲惨な実際の事件を題材にしているんだけど、マックイーンが戻ってきた姿ひとつだけで、おもむろに希望の光がさーーーっと差し込んだところで映画は終わります。見事だ。ずるい。名画かどうかということは、最終的にはラストシーンで決まる。