映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

岡本喜八監督「独立愚連隊」650本目

1959年の作品。

キネマ旬報ベスト10には入らない、つまりもしかしたら“駄作”なのかもしれないけど、すっごく魅力いっぱいですっごく面白い映画でした。この映画は、見た方がいい!

佐藤允って、笑顔が渋いおじさん俳優だよね…?その若い頃の主演映画です。(2012年に亡くなられております。合掌。)
笑顔がビカビカ輝いて、タフでクールな若い兵隊。
ほかの兵隊さんも、たくましくて熱くて素敵です。

とはいえ、ストーリーは今や地上派で放送できないのではないかと思われる、不適切さ。
そもそもの設定が、日本軍が中国で戦闘をしているし、主人公の男が以前つきあっていた中国人の女性が、いまは慰安婦になっていたり。
現地の馬賊(やけに、中国人ふう日本語がうまい)の頭領をたどたどしく演じるのが鶴田浩二、何の役かよくわからないけどなんだか印象に残る兵隊に三船敏郎
なぜかアゴを上げて下目使いで、銃を肩にもたせかけて薄笑いで話す主人公。

西部劇を見すぎた監督が、設定を日本の軍隊に置き換えてしまったという、ミスマッチでけしからん世界。
いろいろとイケナイことが多いけど、やけに爽やかですがすがしい。
撃ちまくって生き残る主人公に自分を投影して、陶酔感にひたっているのに気づいてハッと我に返る、みたいな。

いやーおもしろかった…。戦争大嫌いだけど、この映画は実戦を知っている人にしか作れなかっただろうなと思います。全滅した戦場で見せる、生き残りの笑顔、という不思議な重厚さがありました。