映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

新藤兼人監督「わが道」657本目

久々に新藤兼人作品を見ました。
さすが、納得の新藤クオリティ。ふつうの人の無言のたたかいを描き続けてきた監督の、静かな怒りや痛みが見ているものの心にまっすぐ届きます。

この映画では、警察や役所の「お役所仕事」のはざまに落っこちて、消えてしまった男と、彼を探し続ける妻がテーマです。本当に悪い人は一人もいません。妻以外はみんなちょっとずつ適当で詰めが甘い。彼女の周囲の人たちも、最初は「そのうち帰ってくるよ」とか「もう諦めれば」のようなことを言ってましたが、信念を曲げない彼女を守ろうと、徐々に真剣になっていきます。

なんか、村木厚子さんの起訴されてからの行動とか、オウム事件での江川紹子さんの報道とか思い出します。
屈しない女たち。辛くないわけじゃないんですよ。でも諦めることなどできない。(←感情移入中)
こういうしぶとい女性が、世界中のどこにでもいて、黙って支えてるから、社会が崩壊しないでやっていけるのかも、と、ときどき思います。

浮わついた気持ちが一気に鎮まりますね。新藤作品を見ると。まだ見てない作品がたくさんあって嬉しいです。