映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

エドワード・ズウィック 監督「グローリー」689本目

1989年のアメリカ映画で、南北戦争の黒人部隊について描いた作品です。
南北戦争ってアメリカの国内の争いなんだよね。小さい国で資本主義と共産主義が、それぞれ強大な国をバックにつけて争う、というのとは違う。大昔からある、単なる権力争いとも違う。ひとつの大きな国の中で、平等vs一部の人たちの利益という主義主張が争ったわけで、それに勝って平等を勝ち取った人たちが、いまのアメリカを作ってるんだから、権利意識のレベルが違うはずだ。

ちょっと前まで奴隷だったということは、当時の戦争のしかたを何も知らないどころか、教育もほとんど受けていない人が多いし、さあ今日から兵隊だと言われても、本人たちも困るし軍隊も困っただろう。
そういう戸惑いの中で、徐々に本物の兵隊になり、死ぬ人たちがいて、そうやって彼らは本物のアメリカ人(=国家に忠誠を尽くし、国民としての権利を享有する)となっていったんだろうな。

まだ初々しさのある若者なのに黒人部隊を率いることになる大佐を、「フェリスはある日突然に」のあのチャラい小僧=マシュー・ブロデリック。ふつうの人が感情移入できるという効果はあるけど、大佐にはちょっぴり物足りないかな?その友人役のケイリー・エルウィスは…顔が好きすぎて冷静に見られません。

デンゼル・ワシントンモーガン・フリーマンは、涙が出るほど良いです。いつも良いけどこの映画でも良い。何に出ても、そこに本当に彼がいたんだろうと思う。ポール・ニューマンの本気さと似た感じがします。

何もかも完璧!という印象はないけど、大切なことを伝えようとしていて、それが見る者にちゃんと伝わっていると思います。期待してなかったけど、見てよかった。