映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

スチュアート・ローゼンバーグ 監督「暴力脱獄」694本目

1967年とはまた、意外なほど昔の作品。
権力に屈せず、いつも微笑みを浮かべている”打たれ強い”ヒーローが、脱獄を繰り返し最後まで自由を求める物語。誰にも媚びず、ルールを笑うので最初はいじめられるけれど、一貫した態度に皆だんだん引かれていきます。
主人公ルークを演じるポール・ニューマンのまっすぐ透き通った青い目、なにか悟ったような微笑みが印象的です。

原題は「Cool Hand Luke」。彼がつけられたあだ名です。主人公を中心に考えると「暴力脱獄」とはほど遠いけど、暴力的に扱われて脱獄するという意味では間違いではない…でもやっぱり違うなぁ。

USでは大ヒットし、歴史的名作と言われているらしいです。主人公ルークは歴代のヒーローの中でも上位に位置する人気者だそう。クリスチャンではない私が見ても感じ取れる、ルークとイエスキリストとの類似が、見終わってからじわじわっと気になってくるのですが、それも人気の理由なのでしょうか。

現実の人物を描いた映画として見ると、ルークが「パーキングメーターを片っ端から壊して収監される」までの人生や、壊した理由がまったく謎です。戦争では大きな功績を収めた、という設定ですが。そのせいで人生をむなしく感じてしまい、微笑みとある意味”無気力”な余生?を送ることになってしまったのでしょうか。

ジョージ・ケネディ演じる収容所の”大人のガキ大将”もとても人間味があります。徐々に彼がルークを英雄扱いし始めて、ルークはそれを重荷に感じながらも期待にこたえる。3回目の脱獄のあと、教会でもうこれ以上は無理だと天に向って訴えたあと、穏やかな微笑みを浮かべて銃弾に倒れる。

どこから来てどこへ行ってしまったのか。英雄として語り継がれるルークは、謎の存在です。
それにしてもポール・ニューマンはチャーミングでした。