映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アラン・レネ監督「巴里の恋愛協奏曲」700本目

これはまた楽しい、ミュージカル映画
先に「6つの心」を見たので、しっとりと演じ上げるドラマかを期待してしまって少しびっくりしましたが、だんだん楽しくなってきました。
登場人物が、それぞれすごく魅力的です。個性的で、自分をよくわかってるから、一番素敵に見える髪型をして、一番似合う服を着てる。そんな感じ。

「6つの心」と同じ俳優が違う役を演じてるのも、見ものです!(時系列的にはこっちが先)
6つの心で、父親を介護している苦労人のバーテンダーを演じたピエール・アルディティが、ここでは妻の貞操にばかりこだわる堅物の実業家。
昼は敬虔なクリスチャン、でもちょっと怪しいセクシーな一面を持つ女性を演じたサビーネ・アゼマが、ここでは中心的な存在で、お金持ち実業家と結婚した美しくて奔放なマダム。
そして、部下のミスで除隊されたばかりで、まだ生活になじめない男を演じたランベール・ウィルソンが、ここではマダムの元夫のアメリカ人という設定。フランス語が得意じゃないという役柄だし、この人が一番役柄の落差が大きいです!しばらく、誰だかわからなかった。

アメリ」のオドレイ・トトゥも若くて可愛い娘役で出ていて、きれいな声で歌も歌います。といってもこの映画の中では個性が若干薄いほうで、なるほどフランスでは大人の男女のこれほどの素敵さがちゃんと描かれてるからなぁ…と思います。

純粋に美しいものを愛する監督なんだろうな。細かいところ…髪型、衣装、言葉づかい、店や家の内装、そういったものの、センスというより品位?「美しさ」といってもデコラティブではなく、毒のない透き通った品の良さ。優雅さ。やさしさ。いろいろな人々の個性を美点として捉えてフィーチャーできる人だから、人々がひどいやり方で傷つけられることが耐えられなかったのかな。などと、想いを馳せました。
見れば見るほど、この監督好きです。