映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

呉美保 監督「そこのみにて光輝く」704本目

泣いたーーー!
人物がみんな生き生きと生きていて(あるいは死に死にと生きていて)、何があってもどんな目にあっても、誰も安易に「絶望」なんてコトバを使ったりしないで、家族を思ったり、みんなで笑い合える時間を大切にしたりして、ちゃんと生にしがみついている。

綾野剛の荒みっぷり〜徐々に人生を取り戻してくる演技、菅田将暉のバカ正直な子どものような明るさ、池脇千鶴は昔からうまいし家族を思う演技にかけては右に出る人はいないけど、今回もすごかった。
代わりばんこに誰かが力つきて、別の誰かがその人についていてやる。そういう優しさがあれば…。

”救い”が天から降ってくることはない。生というのは本質的に苦しいものだ。でも光は人の中にある。と感じました。
家族のことでひどく悩んで、見捨てることもできず、自分はいったい何をやってるんだろうと思う瞬間があっても、私ももう少しがんばってみるよ。と思える映画です。(逆に、家族のために自分を犠牲にするという選択をしない人は、ぴんと来ないかもしれません)

生き延びた寝たきりの父親のコトバが聞き取れなかったので、ネタバレブログをいっぱいググったけど結局わかりませんでした。パンフレットにシナリオが載ってるらしい?ので買いに行くべきか。
それでわかったことは、原作と映画はけっこう筋が違うらしいこと。弟が人を刺す動機とか、綾野剛演じる達夫が仕事ができなくなっている事情とかが、共感しやすく構成しなおしてあるようです。

とにかく力の入った、真摯な映画でした。不遇だった原作者や、函館の人たちや、日本のどこかにいる達夫や千夏や拓児たちのために、製作陣が魂を込めて力を出し合った、ということがじっくり伝わってきた、熱く温かい映画です。「オカンの嫁入り」のときはそんなに感動しなかったけど、呉監督やるなあ!…でも、「命がけでやった」みたいなことを言っていた綾野剛や脚本家のパワーもすごかったはず。綾野剛って、ちょっとイケてる俳優みたいに言われてるけど、周囲を巻き込む力がすごそうだから、そのうち監督とかやるんじゃないかなぁ?