映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

小泉堯史 監督「雨あがる」726本目

静かな映画。
宮崎美子があたたかく朗らかでとても良い妻の像を作り上げています。
寺尾聡はもともと好きで、地味すぎるかなぁと思ってもやっぱり良いので、言うことないです。
それにしても地味な映画ではあります。
この夫婦は、武家だけどなんというか最下層で、実質的には剣術というかチャンバラで生計を立てている旅芸人です。でも将来の不安など感じさせない。こういう行き方ができたらいいなと思います。

で、これ、黒澤明監督が脚色しておきながら亡くなってしまい、小泉監督が跡を継ぐ形で作られたものだそうです。
黒澤監督っぽくもあるけど、黒澤映画にありがちな、男が女を描いた感じの骨太さがなく、角のないやさしさが流れる映画に仕上がりました。

しかし、最後に夫婦が山道を歩き続ける場面は、どうしてあんなに長いんだろう?
そういう長い場面もあるけど、短編小説のように短ーい印象の小品でした。