アクの強い映画だけど、見応えがあります。
ハビエル・バルデムの、どろっと濃い悪辣さ。冷酷なのにちっとも「クール」な感じじゃなくて、そこだけ温度が高く感じさせる、独特の悪役っぷりです。
欲張り、ヤマっ気、負けず嫌いというハリウッドで最も殺されやすい性質の男を演じるのはジョシュ・ブローリン。
彼らを追う定年間近の保安官がトミー・リー・ジョーンズ。
これ以外の登場人物はほとんど、出てくる端からシュン、パスッ、パン、と次々に殺されて行きます。
ヤマっ気男の妻だけがまっすぐでまともで、一筋の光のようなのですが、彼女もまた撃たれたのかどうかは謎のまま。ハビエルが一度だけ、コインの裏表の気まぐれで殺さなかった男の存在が、ここで伏線として生きてきて、「もしかしたら撃たなかったかも。でも撃ったかも。」という含みを残します。
コーエン兄弟って、「ファーゴ」を見ると、さえない人たちを嘲笑するイヤなヤツらかなという印象だったけど、この映画にそういうインチキ臭さはありません。映画の面白さを心底わかっている、巨匠の片鱗を感じました。