映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウォルター・サレス 監督「オン・ザ・ロード」790本目

このところ、ひとりビートニクスブームで、この映画の原作、ジャック・ケルアック「オンザロード」を読んだので、映像も見てみようと思いました。

小説のほうは、若造(といっても戦争帰りなので若干タフな感じ)がアメリカ国内をふらふら旅しては酒や薬や女をふらふら、という物語で、彼の憧れるディーンという不良もあんまり具体的なイメージを持てませんでした。

映画はまたイメージと違っていました。主人公サルを演じてるサム・ライリーは、とても戦争帰りと思えない坊ちゃんっぽさ。ディーンはワイルドだけどそれほど強い印象がなく、彼が入れ込んでる”ちょっと足りないかんじの美人”はクリスティンスチュワートのイメージじゃない。しっかり者のカミール役のキルスティンダンストはぴったりだなと思ったけど。

でも、見てるうちにディーンがハマり役に思えてきました。もともとワイルドなんだろうけど、お坊ちゃんのサルが喜ぶから、ますますエスカレートして、彼が来ると妻も愛人も捨てて旅に出たくなる。すげージャズのライブに連れてってやりたくなる。という、いわばワイルドなお調子者…そしてやがて体を持ち崩してしまう。そんなディーンを見て、若干冷たく去っていくサル、ちょっと残酷…。

わりあいトホホな物語だと思うけど、アメリカ横断はちょっとしてみたいと思った。メキシコも行ってみたい。いつかきっと、そのうち。

ところで!彼らの大好きなスリム・ゲイラード(実在)を誰がやるのかと思ったら、なんとコーティ・ムンディだ!キッド・クレオール&ココナッツのMCの彼が、けっこう年をとって貫禄つけて出てました。これは素晴らしいキャスティングでした。