「低予算だけどいい映画」「とにかく音楽がいい」とどこを見ても書いてある。実際見てみたら、それ以外の形容のしかたが思いつかない。
その辺のストリートにいそうな歌うたいの青年と、その辺で雑誌を売っていそうな移民の女性。そのリアリティがとてもよくて、彼らが自分たちらしく歌う歌が、ああ歌ってこんなふうにそれぞれの人が自分の生を歌うものだったっけなと、思い出させてくれる。
シン・リジィのコピーバンド(笑)とプロのエンジニアとスタジオに入った感じもいい。若いころ初めて自分の真新しい安いギターを持って、友達とスタジオを借りたときのドキドキがよみがえってきた。
どうしてこの人たちはこんなに、新鮮に感じながら演じることができるんだろう。
彼らがハリウッドの俳優じゃないからこそ、彼らの歌をずっと聴いていたい。自分の故郷の小さなスタジオに、自分が17才の姿でぽつんといるように感じられるから。
主人公たちがその後実際につきあって、別れたというのも、なんかいいですね。出会ったり別れたりしながら、ときどき輝いたりしながら暮らしていく・・・それでいいんだな、と思える。
ミュージカルもいいけど、この映画の地味さは捨てがたい気がします。