映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

佐々木昭一郎監督「夢の島少女」800本目

1974年作品。
これもまた強烈な作品でした。
中尾幸世という少女が演じるのは、ど田舎の美少女。というと身も蓋もないけど
どうということもない少女だった私としては、クラスに一人くらいいる、要望も雰囲気も美しい少女に憧れたし羨んだものだけど、彼女たちはおそらく悪い大人たちも惹きつけずにいられなかっただろう。誰にも助けてもらえずに、押し込められてぐいぐいと追い詰められていく危険がいっぱいあった。
彼女の深くまっすぐな視線が痛いです。

一度死んでなぜかまた生まれ出てしまったような彼女を、チンピラみたいな長髪の少年が浜から拾ってくる。
彼にとって彼女は宝物でお姫様で、彼女といっしょに記憶の糸と軌跡をたどりながら、彼女を傷つけたものを退治していく。そしてまた出会った彼女をまた引きずっていき、今度こそ二人で。

流れ続けるのは「カノン」。というか戸川純「蛹化の女」にしか聞こえない…。あまりにもエキセントリックな映画なので。

下記の「さすらい」と同じように、みんな傷ついたり壊れたりしてるんだけど、「いいよ、それでも。」とぜんぶ肯定してくれる。神の視点って感じなんだよな。傷をさするでもなく、責めることもなく。極端にいうと、彼女が自殺したとしても、彼があの男を殺したとしても、それでいいんだ。というような。

個性的な映像やわかりにくいストーリーよりも、何よりこの「神の視点」がすごい、と思う。
河瀬直美よりすごいと思うんだけど、共感してくれる人いるかな?