思いのほか強烈な映画だったな。
強烈といってもショッキングな場面はひとつもない。コミケでたまたま出会った、わりと普通の人たちが、何かのスキマにつるっと落ち込んでしまう。
コンビニの先輩がとがめられて出て行けと言われる場面とか、「僕」が自分の動画のプリントアウトを見せられてから引きこもりに至るまでとかは、まったく語られない。(それに比べて、主婦”あんずちゃん”にはこの映画は冷酷で、夫が動画を見ながら泣く傍で姑が彼女をなじる場面があったり、誰からもやさしくされる場面がないとか。女性監督だから女性のことはリアルで冷徹って気がする)
私は年増女なので、いてぇな、でもそういうもんだよ人生ってのは、とか思うけど、10代でこの映画を見たら胸が痛くて眠れなかったかもしれない。
ふがいない「僕」は、青くて色気があって、こりゃー主婦が放っておかないだろうという魅力いっぱいなんだけど、本人には若さの価値などまだわかるまい。
「僕」=永山絢斗、「主婦」=田畑智子の二人もとても良いけど、それ以外の登場人物も皆とても良いです。
原田美枝子のやわらかく重ねた年輪。窪田正孝のすれた目つき。涙ぐむ田中美晴 。etc etc
最初は2時間半も長いなぁと思い、始まってからも時間の流れがまどろっこしかったりしたけど、見終わった後では、この映画好きかもと思う。
原田美枝子のセリフはちょっとできすぎかな?