映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

降旗康男 監督「鉄道員(ぽっぽや)」815本目

ファンタジーなんだな、この映画は。
坂本美雨のボーカルもあいまって、ジブリのような世界。
おとぎ話と、家族の愛情と、不器用さと素朴さと、自然のきびしさと、仕事への誠実さ。日本人の情緒がぜんぶ詰まっています。
赤ちゃんのうちに亡くなった娘(たち)が可愛すぎてズルい。
女性の私としては、亡くなった父を思って泣けてしまいました。

ジブリとも通じるけど、北野武とも通じる、男性的なファンタジーなんですよね。
仕事に一途に打ち込んでいて、口では言わないけど、言えない俺の気持ちを察してくれ、という、すこし子供っぽい男性像。最近思うのは、そんなどこか未熟な男性たちが活躍できるのは、日本では太古から女性のほうが太陽だったからなのかもしれない、ということ。女性のほうが不器用でよく仕事する従来の男性像をやってしまうと、男性のほうは太陽のような父親的存在に変わることができない分、ぎすぎすしてしまうこともあるのかな。

そんな手のかかる日本の男性像が純粋に表現された作品でした。