映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

岡本喜八 監督「肉弾」821本目

1968年作品。
じつに不思議な、琴線をくすぐられる映画でした。
ラブ・ブラック・コメディ?
戦争もの?

20歳そこそこの特攻兵と、売春宿をいとなむ両親が亡くなって後を継いでる女子高生のおかみさん。二人で数式を唱えながら雨の中でぶつかって「出たー!」急に大きなボリュームで、のんびりと明るいテーマ曲がかかる。
という印象的な場面のことを、たしか「スコラ音楽の学校 映画音楽編」で取り上げてた。
そのまま走り出した二人は、彼女の両親が”ロウ人形みたいに死んでしまった”防空壕で結ばれる。
少女は卯年生まれだから「かわいいうさぎちゃん」、青年は子年生まれだから「ねずみさん」。ファンタジーなのかこれは?

しかし青年は特攻に行くのだ、という残酷な事実。彼は砂浜に埋めたドラム缶のなかで、鬼ごっこのように敵軍を見張る。ドラム缶の船のなかで、偵察を続ける。その中にいたままで、彼女が”ロウ人形みたいに”死んでしまったことを雷門ケン坊(懐かしい)から聞かされる。その中にいたままで、終戦を知るけど、助けてもらうこと叶わず白骨化する。これはキッツいギャグなのか。
いやほんとにギャグなのかもしれない。

なんて不思議な感触の映画なんでしょうね。何年も後に出現するシュールな漫画みたい。見てみなければわかりません。見てみてよかったです。