映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

北野武監督「ソナチネ」828本目

怖い映画、という先入観が裏切られ「あの夏、いちばん静かな海」の延長線上にある、おだやかな死生観を感じさせる作品だなと感じました。

「永遠という一瞬」を重ねる人々のなかには、何も恐れない、生まれたままのような女の子もいれば、死を予感する暴力団員たちもいる。死というのは、誰かが何気なく掘った落とし穴にうっかり落ちるようなことなのかもしれない。

「あの夏」のキレイすぎる感じや、たどたどしさがあまり好きじゃなくて、彼のヤクザ映画がちょっと怖すぎると感じていた私にも、この映画でその二つが1つになって監督自身を形作っていることが、すごく腑に落ちました。これが、完全になるっていうことなんだろう、と思います。いままでに見た北野作品の中では最高傑作だと感じました。