映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ノーマン・フォスター監督「Think Fast, Mr. Moto」833本目

1937年のアメリカ映画で、日本では公開されていない作品です。
当時、いつも笑っていてやたら礼儀正しい日本人探偵「ミスター・モト」が活躍する新聞小説が人気で、それを映画化したものだそうです。主人公を演じるのはユダヤハンガリー人のピーター・ローレ。私の好きな俳優です。フリッツ・ラングの名作「M」やスタンバーグの「罪と罰」で主演した怪優。「カサブランカ」や「マルタの鷹」のような誰でも知ってる名作にも出ていて、あまりの印象の強さに、チョイ役でも決して見逃す事のない俳優です。

彼が戦前、日本人探偵を演じた映画シリーズがあるとネットで知って、ずっと見たくてたまりませんでした。アマゾンに中古が安く出ていたので、ボックスセットを即買い。見てみたら、期待を裏切らない面白さでした。

タイトルの意味は、「機転を利かせろ」というようなことかな。
モト探偵の本職は貿易商で、探偵はホビーだそうです。貿易商だけどピストルを手放さず、なぜか防弾チョッキまで身につけているという本格派。慇懃無礼ともいえる礼儀正しさと裏腹なジュージュツの強さ、常に冷静で機転が利く彼は、難局を乗り切り、かつうまいこと利益を伸ばしていくのです。

これは日本と戦争してる国では放送できないだろうなぁ。やっと今一部で再評価されても、日本では多分ほとんど知られてないと思います。面白いのに。英語版でも、この頃の映画は滑舌クリアだし、英語字幕出して見てればほぼ100%理解できますよ。これほど入手困難でなければ…。

ちなみにこのバージョンは、2000年代になってからデジタルリマスターされたものなので、画面のゆらぎや傷もなく、音も画面も極めて良質です。