映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

デヴィッド・フィンチャー 監督「ゴーン・ガール」844本目

まーなんてイヤな映画でしょう!(以下ネタバレ)
怖いとは思わないし、アガサ・クリスティ原作のドラマに、浮気してる夫に殺されたと見せかけて自殺する中年女性が出てくるのもあったし、人間って怖いよ〜というのはこの映画に限らず、驚きではありません。
これをロザムンド・パイクが演じるということや、彼女がマスカラしないと誰だかわからないアジア人顏になることは衝撃でしたが。

この映画を見て「ジョンベネちゃん事件」を思い出した人も多そう。アメリカのショービズとかワイドショーとかリース・ウィザースプーンの映画とか、派手で元気で明るくて楽しいというあの国の上澄みの部分の下に何があるのか。あのバドガール的明るさがむしろ怖いと感じていた人には、ああやっぱりこういう映画が出てくるか、と納得する部分もあったのでは。

驚きのある映画ではないし、うかつな浮気夫と粘着質の妻(日本のドラマならむしろよくある設定)の描きかたはアニメみたいに極端だけど、妻の計画が世間の反応を受けて着々と変更されていく感じが、黒くて飽きさせません。監督の知恵勝ちです。ほんとこの監督、救いのない黒さが好きだな。観客がおぞけ立っている姿をスクリーンの端から見て「ウッシッシ」とか言ってそう。

少なくとも、一度は誰しも見るべき作品であることは間違いありません。