「誰も知らない」ほどは胸をえぐられなかったので、ソコソコ良い点、にしました。
この映画は、かなり終盤になるまで、徹底的に親の視点で描かれていて、子供たち自身の感情は、「おまえは本当はうちの子じゃないんだ」というショックを与えられる場面も、新しい親たちに対する気持ちも、まったく触れられません。それが「可哀想だな」とは思うけど、見るものの痛みにまでは至らない。終盤に子供たちのかすれた叫びのしっぽのようなものがわずかに描かれていて、そのはかなさに胸を打たれるんだけど、それまで冷淡だった若い父がそれによって心を開き始めることで、見ている者も救われる。痛んだ胸のまま終わらない優しさや穏やかさが、この映画にはあります。
福山雅治が、自分中心で、やっと父性に目覚めたけどまだまだ青い父親を演じていてはまり役です。尾野真千子もリリーフランキーも真木よう子も樹木希林もいい。
でも…わりと、中心がどこにあるのかわかりにくい映画でした。感動していいのか、それじゃまだだめだと言われているのか、子供の気持ちになってみろということなのか…。
もし私が取り違えられた親の立場になったとしたら。あっちの子ともこっちの子とも仲良くなろうとするだろう。「おかあさんなんて呼ばなくていいんだよ」って言うだろう。でもそれが薄っぺらい偽善じゃないといえるんだろうか?