映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジル・パケ=ブランネール 監督「サラの鍵」886本目

とても美しくて、視点の優しい映画なんだけど、見終わってからしばらく、鬱になりそうだった。もっと残酷な映画も、もっと辛い映画もあるけど、これほどトラウマが残る映画って見たことないです。

まず、フランスでかつて起こったことをみんなの前に出して見せてくれた、ということで驚きます。その中でまっすぐで勇敢な少女サラ。彼女が弟を思って敵から隠し、誰も成し遂げられると思わなかった脱走まで成功させるところは、誰もが希望いっぱいに見ていたと思います。その少女が「ごめんね、ごめんね」と叫び、それから生き延びて子孫を残しても、あの瞬間から少しずつ少しずつ死に向かっていったのでした。

戦争で人を殺めて戻ってきた元兵隊の話や、生き延びるために仲間を売った被害者のひとりが、孫ができた頃に自ら命を絶つ話を見たこともあります。彼らが、ある瞬間から最後まで、浮上することなく少しずつ少しずつ沈んでいったと思うと、なんだかとてつもなく暗い気持ちになってしまいます。

人を本当に壊してしまうのは、罪の意識なのかもしれません。そこからはもう誰も上っていけないのかな。それでも何かに、誰かに尽くすことで、光を見つけられないのかな。