映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クリント・イーストウッド 監督「グラン・トリノ」921本目

監督がいい役すぎるだろ〜!(笑)というのは置いといて。
孤独な元軍人と、彼が昔殺めた人々を思わせる善良な隣人一家。
これがアジアの一民族の一家である必要はあるんだろうか。(30年前なら黒人一家だったんじゃないのか?)
最後の、自分が攻撃をしかけずにハチの巣になることは、キリスト教的殉職なんだろうか。
等々、とても現代アメリカ的な、アメリカの良心を描いた映画でした。

その善悪のものさしに注目すると、合う合わないという判断が出てきてしまうと思うけど、
ロミオとジュリエット、ウェストサイド物語、現代映画のいじめと報復、に通じるテーマは普遍的で、その中で「グラン・トリノ」という車が持つ甘い憧れや夢が、はかなく切ない味わいをもたらしていたと思います。

いろいろな思いを大上段に構えずに、「俺はこう考えてこうした。」というような市井のできごとに落とし込むところが、イーストウッド監督の映画の魅力だなぁと思います。その普通さを、プロっぽくない役者さんたちがよく演じていたと思います。