映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

溝口健二監督「山椒大夫」994本目

1954年作品。

改めて、田中絹代って、史上最高に「哀れ」をもよおさせる女優だなぁと実感。
健気で一途な目。幼く感じられるほどの童顔。小柄でちんまりとした姿。
この人は本当に、可哀想だ(と、つい思わされてしまう)。

Wikipediaによると、おおもとのストーリーはもっと残酷だったらしいけど、小説化した段階で耽美的なストーリーに昇華され、映画化にあたってここまで美しくなった。(だって森鴎外溝口健二だもん)リベンジの物語から親子愛の物語へ。

おおもとのストーリーのままだと、「それでも日は昇る」のような映画になってたわけですね、きっと。もし、小説化したのが芥川龍之介で、映画化したのが黒澤明だったら、それでアカデミー外国語映画賞を取ってたかも。
そう考えると、この「山椒大夫」から外国人受けしそうな極端さはあまり感じられないんだけど、そのデリカシーがヨーロッパでは評価されるのかな。テーマは「それでも日は昇る」というくらいでかなり世界共通、普遍性があり、日本らしい繊細な美しさとエキゾチックな着物姿。ひとつの美意識の完成形なんだな、と思いました。