映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

溝口健二監督「残菊物語」1016本目

1939年作品。
主役は花柳章太郎と森赫子 。
あまりに古いので画面も音もざらざらしていて、最初の30分くらいは見づらいなぁと思っていたけど、やがて全然気にならないくらい、没頭してしまいました。
ついこの間見た、フランク・ボーゼージ監督「武器よさらば」にも似た、素直で優しい二人の純愛の物語です。
二人ともちっとも汚れないまま、最後まで純粋なままなのがいいですね。いまの映画は、「いろいろあって汚れたりしたけど、純な気持ちも持ち続けた」というふうだけど、この頃の登場人物は思春期の少年少女のように美しいです。
男性がちょっと頼りなく、女性の愛が母のようにひたすら深い。こういう美しい恋愛があったと思うだけで、見ている自分の心も洗い流されるような気がします。

レンタルDVDの特典には、溝口監督にシゴかれた新藤兼人監督(もまた故人)のインタビュー映像が入っているのも貴重。