1936年、昭和11年の作品。
ヒロインはまだ16歳の原節子!しかも、いまだ見たことのない町娘姿です。
(昔の人の頭は大きく結ってあったらしい。最近の時代劇は、あまり盛らずにさらっとまとめたくらいの軽い結い方だけど、この頃の頭は大きいなぁ。リアルに近いのかも)
今でいうチンピラふうの市之丞となまぐさ坊主の河内山、この二人の悪役面がすごい。今ならこの面構えだとずるい悪役だ。でも二人とも、目つきは悪いが心は熱い。果し合いをしようとするのを止めに入った町娘が手を切ると、二人ともあたふたして「そいつはいけねえ。」
河内山を演じてるのは河原崎長一郎の父、河原崎長十郎。たまに息子そっくりに見えるけど、息子が基本的におだやかでいい人役なのに対して父は基本的にアクの強い役柄。
もう加東大介が出てて、相当若いはずだけどいつもと同じ(名前は違うけど)。年をとってもこのままだもん、ずっと若々しかったんだなぁ。
意地悪な人、欲深い人、上司の命に従う忠実な人たち、等々、出てくる人たちは人間味あふれていて誰も本当の極悪人ではありません。江戸の情緒にはこういう懐の深さがあったってことかな。この監督の手にかかるとさらに、そういう人たちをみんな包み込んで赦すような、デリケートで暖かいものを感じてしまいます。