「共喰い」もすごい映画だと思ったけど、これはもっと大名作だった。見てよかった。
3時間半という長さがまったく苦になりません。
セリフが少なく、淡々とした映画で、説明的な場面も全然ないんだけど、構成がうまいおかげでちゃんと意味がわかるし、場面変わりや会話のテンポが快くて、飽きもしないし急かされることもない。
ショッキングな場面転換やCGを多用したハリウッドの映画の対局のような、抑えて抑えて引き出す映画。
映画のなかの人たちの、それぞれの心が2時間半で動いていくことが一緒に感じられます。この世界にもっと一緒にいたくなる。
九州の山あいの何もない景色もいいです。ほんとうになにもないから。
こずえが海に行く場面の音楽の使い方は、いままでに見た映画のなかでベストに近いくらい素晴らしかった。
涅槃みたいなアンビエントな音が、音声ボリュームがきわめて低いこの映画の中で、レンジいっぱいに広がって、その中をリトル宮崎あおいが海を凝視しながらずんずん進んで行く。このセンスはすごいです。
エンドロールに差しかかって、色づいていく山々と重ねてちょっと不安げなオーケストラ(ふうシンセサイザー)が広がっていくのも素晴らしかったです。
それにしても音声レベルが低い!自宅のテレビの音声はじめてマックスまで上げました。音も色も、かき分けてかき分けてやっとたどり着けた。
役者さんもみんなすごくよかったけど、国生さゆりって本当に人の情感の理解が深いですね。宮崎あおいは、粉の映画がベストかも。
「3部作」全部見たい。次はまず「サッドバケーション」を。