映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

塩田明彦 監督「カナリア」1121本目

2004年の作品。
冒頭、言葉による背景説明があって、いまどき珍しいなぁ、ビジュアルだけですべてを語ろうとする監督が多いのに、と思ったけど、説明はそこだけで、あとは登場人物が語ってくれました。

・・・そうか、この映画は、オウム事件の逃亡指名手配犯が次々に捕まる前に作られたのか。
だから、まだ捕まっていない幹部やその子どもたちの行方に想いを馳せたんだな。

幼くて野性的な谷村美月と、老成して精悍な石田法嗣がとても素敵です。
この二人がこの映画を”ほんとうのこと”にしてくれている。
幹部女性で少年の母親役を演じている甲田美也子もいいですね。浮世離れした雰囲気がバブルの頃から際立ってたけど、純粋すぎて思い込んでしまう人の役がぴったり。
でも・・・少年に語りかける西島秀俊には説得力がないなぁ。
あと、二度ある「誰かが誰かに抱きつく演技」が不自然だ。
それと、結末が弱い・・・
というのはあるけど、主人公の二人のたたずまいが素晴らしくて、とてもよかったです。