映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

グザヴィエ・ドラン監督「わたしはロランス」1183本目

若い頃、たとえば20歳前後で、自分が本当にやりたいことがわかってる人っているよね。グザヴィエ・ドランって人も、そういう人だ。才能や実行力もだけど、そこが何よりうらやましい。抑圧された欲望があるからるからやりたいことが研ぎ澄まされてくるんだろうか。

この作品はずっと楽しみにしてたけど、いまのところ、彼の作品はデビュー作の「マイ・マザー」が最大のショックだったな。この映画は、もっとグラマラスなドラアグ・クイーンがいっぱい出てくるような映画かと思ってたら、主役(パトリック・ハーランばり)が優男でちょっと意外。むせ返るよなイメージの氾濫もないし。

ゲイ、レズビアンバイセクシュアル、トランスジェンダー、とどんどん虹色の幅が広がるに連れて、「体は男、心は女だけど性的にはレズビアンで女性が好き」というようなパターンもありうるなと思ってたので、とうとう出たかという感じでした。(この映画はそこまで典型的なパターンとして描かれてるわけじゃない)

自分は男で男が好きだ、というようなはっきりしたものが自分にはない。女に生まれたから女をやっていて相手が男だというだけで、同性でも異性でも初対面では同じように緊張するし、素敵だなぁかわいいなぁと思うのは男性も女性も同じ。意外に多数の人がこういう”ゆらぎ”を持って生まれてるから、親に決められた人と結婚しても、まあまあ暮らしていける人がそこそこいるんじゃないかな。だからこそ、泣いて喚いて「自分はこれじゃなきゃ嫌だ!」と思える人がうらやましいのです。