映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

デヴィッド・リーン監督「インドへの道」1252本目

とうとう来ましたよ!
この年末に初めてインドに行ったことだし、大学の英文科でE.M.フォースターのゼミにいたときにちょうどこの映画が公開されたことを思い出しつつ、いろんなことを思い出しながらじっくり鑑賞しました。

先に原書を読んだもんだから、主人公の名前「アデラ・クエステッド」だとか、やけに細かいディテールを覚えています。当時わたしも小娘だったけど、この主人公のカマトトっぷりには反感を持ったものでした。(生意気!)
しかし、英国の上流階級の娘が、初めての海外旅行でインドに行くという驚きが、当時のわたしには十分に想像できていなかったかもしれません。・・・と、少しでもこの高慢ちきな女に共感できる部分を探してみたけど、やっぱりだめだなぁ。
アデラ役のジュディ・デイヴィス、わたしずいぶんほかの映画で見てました。地味な中年女性、みたいな役が多いですね・・・キャラ的に”お堅い”のはずっと同じだったらしい。

E.M.フォースターがゲイだったことや、有色人種の恋人を持っていたことは有名なので、同郷の人たちが彼らに対して見せる失礼なふるまいに憤りを感じていたんじゃないか、とつい想像してしまいます。(とくに女性。)
この時代、インドは英国からの独立をまだ果たせず、騙されてるんじゃないか・・・という疑いが強くなってきていた時代。(インドでわたしが会ったガイドは「イギリス人は、大どろぼう」って言ってた)

この映画でインド人を演じてる人たちは、実際には英国育ちの人も多いだろうし、アレック・ギネスも混じってるww。

Dr.アジズのイノセントな人の良さが、見てて辛いですね。この映画は・・・大英帝国版「それでも僕はやってない」だったのですね。フォースターの強烈な女性嫌いや英国貴族嫌いが、だんだんとにじみ出てくるようです。ギンレイホールで、この2作をカップリングして上映してほしい。新旧の痴漢冤罪映画ってことで。
英国人全般に対する憎しみを強めて終わるのか、それもしょうがない・・・と思ったら、数年後の再会と赦し。ここまでくると、「ヘヴンズ・ストーリー」あたりの大作の趣きを感じさせます。

今こそもう一度見てほしい、異文化のあいだの人間のつながりを描いた名作だと思います。