映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

黒沢清 監督「岸辺の旅」1335本目

いきなり、3年前に失踪した夫が、生きてるっぽいかんじで、死んで戻ってくる。
という設定が、唐突に始まるんだけど、深津絵里の「いつどこで何をしていても深津絵里」な演技で、あまりにも普通に映画にすんなり入っていけます。

戻ってきた夫のミッションのようなものや、妻のささやかな隠しごとや、行き交う人たちとのふれあいが、とうていありえないようでありながら、昔話のように優しく入り込んできます。

不思議な暖かい映画だったなぁ。妻は辛い別れをしたけど、別れもできないまま待つのより、これでまた歩き出せるのかな、と思いました。

小松政夫のベッド脇の壁に貼られた大量の花、という絵が強烈でした。