映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ネメシュ・ラースロー 監督「サウルの息子」1344本目

2015年制作のハンガリー映画
アウシュビッツで、最終処理という”汚れ仕事”を担わされていた「ゾンダーコマンド」と呼ばれるユダヤ人たちがいました。主人公サウルは、背中いっぱいに大きく赤で「X」印をつけられた上着を着てその仕事に黙々と従事しています。

工場従事者のように、あまりに淡々と作業をしています。自分がサウルの状態になって、もう心が死んだ状態でそこにいるような錯覚をおぼえたまま見ています。ほかの人たちの感想みたいに、恐ろしいって感じなくなってる自分はやばいんでしょうか?

サウルには本当に息子がいたんだろうか?会ったことのない息子がいて、イメージをふくらませてたのか。
それにしても「ゾンダーコマンド」というのは強烈に残酷な仕事です。そういうものが存在したことを知って、この映画のような物語があったかもしれないと考えたのかな、作者は。
ナチスの中に、本当はこんなこと止めたいと思っていた人が実はいたんだろうか。いたとしたらどのくらいの割合だろう。

監督は”映画界の極北”タル・ベーラ監督のもとで学んだとか。人間のなかに残酷さがもともとあることを認める年齢にはなったけど、どれくらい割り切れるのかが、まだわからない。一生忘れない作品になったことだけは、確かです。