映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャン=マルク・ヴァレ監督「わたしに会うための1600キロ」1390本目

リアルで痛い、実在の女性の道のりを描いていて、共感しました。
リース・ウィザースプーンが、あのお人形みたいなキューティ・ブロンドだった彼女が、汚れ役といえそうな役どころを誠実に演じています。むしろ・・・エンドロールに出てくる著者より、この物語を伝えるのには合っている気がするくらい。著者は成熟した健康な大人の女性に見えるけど、この映画のなかのリースは少し危なげで少女っぽさが残っていて、道を踏み外しそうになることの本当らしさが伝わりやすい、と思う。

原題「Wild」っていいなぁ。言葉のイメージが日本だと「都会の不良」も含まれると思うけど、この映画では「荒野の荒々しさ」に飛び込んでいくイメージだと思うので、邦題は必要だなぁ。

彼女の母親役のローラ・ダーン、なんかすごくいい。(40歳のリースと9歳しか違わない49歳らしい)
優しく、ちょっと(一見)ゆるく、だけど本当は誰よりも芯が強い。
ダメな夫と可愛い子どもたちを愛しぬく彼女の人生を、称賛する映画でもあります。

ただ・・・主人公がグレ始めるきっかけが、いくら母が偉大でも、ちょっとピンとこない。あと、結末がぼやっとしてる。(現実の人生ってそんなもんだと思うけど)
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