映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

庵野秀明 総監督「シン・ゴジラ」1392本目

見ましたよ。旬なうちに。
なんていうんだろう?ものすごく日本的な、生ニュースドキュメンタリー+その舞台裏映像みたいな映画だった。日本的な組織の弱さと強さを皮肉りつつも、映画自体が日本的な枠を強調してきわめて日本らしい。

<以下一部ネタバレ>
びっくりするくらい豪華で膨大な数のキャスト。内閣府も警察も自衛隊も、考えられる限りリアルに、無線なんかもたぶん実際に使われてる用語を使って、現場の人たちは映画みたいに慌てたりせず冷静に、着々と、自分たちの業務に従事する。たぶん、映画っぽさ、ドラマっぽさ、〝エンタメ性”がこの監督は大嫌いなんだろうな。わざと驚いたりうなだれたり声を荒げたりするような、様式的な演技を否定しているかんじ。

それにしても台詞が多い、多すぎて演技どころじゃない。与えられた文字数を瞬間のうちに、噛まずに、言い切ることに追われてる。それがエンタメ性を排したい監督の意図に合致してるとも思うけど、長谷川博己は特に追われてたなぁ〜。噛んでNG出した人多かったんじゃないかしら。

石原さとみの英語は、日本人の中級学習者という感じで、間違っても日系ネイティブスピーカーではないけど、ハリウッド映画に出てくる小生意気ですごく可愛いエリート女子の和製コピーっぽくて、不思議と面白かった。英語が母国語の外国で上映するときは、全部吹き替えてもらえれば全然問題なし。

ゴジラについて最後にやっと触れるのは邪道かもしれないけど、それくらい他の部分が、度肝を抜かれるほど新しかった。でもゴジラが、むにゃむにゃっとしたヒレのような手をした大トカゲのような形で表れて、どんどん変態していったのにも驚いたし、酔っ払いみたいにどわっと溶岩のようなものを吐いたのも良かった。ゴジラに立ち向かう日本人たちが、なかなか無力なのも良い。冷やして固めてフィギュアのようになっただけで、それがいつか溶けて復活するのでは、という余韻を残したのも良かった。

CGの発展がとても良い形でこういう映画を可能にしたんだな、とも思います。今まではアニメを作るしかなかった人たちが、生身の人間で映画を作るとこうなるんだ、というのは嬉しい驚きです。アニメにはどうしても、アニメ独自の狭さや偏りがあるんじゃないかと思ってた私のような人は、なおさらこの映画や、これに続いて出てくるであろう新しい実写映画を見てみるといいと思います。

とりあえず、映画好きなら、旬なうちに必見!