映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

エルマンノ・オルミ 監督「木靴の樹」1425本目

カンヌでパルムドールを取った、ということを知っているのといないのとで、印象が変わるかな?評価を変えずにいられるだろうか、私は?

3時間ひたすら、昔の名画みたいに美しい農村と美しい人たちが画面のなかでふつうに暮らしている。美しくあろうとしていない人たちや、家や家畜たちの美しさに目を奪われる。
その中では、いいことも起こるけど、たいがいはあんまりみんないい目にはあわない。イタリアといえば「自転車泥棒」だよなぁ、ゴッドファーザーの陰で小市民は苦労しながら地味に暮らしてるのかな。

あまりにも静かな彼らの暮らしに、しずかに心を打たれるけど、短気な私は真逆のエンターテイメント映画も好きだ。この3時間を見通すのはちょっとつらくもあった。

それにしても、追い出された家族はそれで滅亡の道をたどるんだろうか?もうすこし良い地主に巡り合えたかもしれないし、行商人になったかもしれないし、家族がばらばらになってそれぞれ生き延びたかもしれない。変化はかならずしも悪いことじゃない、とくに、今までの生活が苦しかったら。