映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルパート・グールド 監督「トゥルー・ストーリー」1439本目

これ日本では未公開なんだ。
さいきんツタヤが、無料配信ポイントを送ってくるので、選んだうちの一つがこれ。
なかなか見ごたえがあった。
マイケル・フィンケルという、つい話を盛ってしまったジャーナリストを、家族を殺したクリスティアン・ロンゴという男が利用しようとした、という、人間の深いところの難しさを描いた映画でした。実話。

利用されたジャーナリストのことが気になる。
心に悪がある人が、どういう人のどういう部分に付け込むのか、という点が知りたい。
「悪」が本能的に感知する、他人の弱み。つい記事を盛っちゃって干されたジャーナリストの、名誉回復をもくろむ心に付け込んで、利用するために彼の名前を騙る。強すぎる好奇心を刺激されて近づくジャーナリスト。近づきすぎて、利用されたことに気づいても、歩き始めた道を途中で変えられない。
ただ、この映画の場合、殺人者のプランはそれほど周到ではなく、裁判官たちまで丸めこまれることはありませんでした。これが、マンガの「モンスター」みたいな完全主義者だったらどうなってたんだろう。

死刑囚に惹かれて獄中結婚とかしてしまう心理に近いのかな。そういう人は、宗教に浸っているケースも多そうだ。
一度疑い始めれば、どこまでも疑いの深ーい沼に引きずり込まれていくのかもしれない。一切疑わずにすべてを信じてオオカミに食べられてしまう羊のほうが幸せなのだったりして・・・。