映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヴィム・ヴェンダース 監督「パリ、テキサス」1455本目

こんなに悲しいお話だったっけ?
公開1984年。多分その後VHSをレンタルして見たんじゃないかな。
ライ・クーダーのギターは覚えてるのに、筋を全く覚えてなかった。
ナスターシャ・キンスキーは記憶の何倍もかわいくて美しい。なんてすごい美少女だったんでしょう。
こんな美少女と、やさぐれたおじさんが?と思うけど、似合わない二人の関係が、最後の会話で突然光を帯びてくる。

30年前の、まだ小娘だった私には浸透しなかった、静かな、かなしみだなぁ。今の私には、自分のことのように泣ける。
テキサスの砂漠のような荒涼とした感情じゃない。温もりや湿度のある、人の温かみのある感情だ。
愛と憎しみはよく似てる。その本質は執着だ。
それがなければ生きる力が湧いてこない。枯れかけた男が、その、愛のような憎しみのようなものをどんな風に忘れて、どんな風に思い出したんだろう。

ヴィム・ヴェンダースやっぱり凄いなぁ。これは中年になってから見るべき作品です。
しかし、なんとも、日本人情緒的なものが漂ってくる。真っ青な空と赤い砂漠なのに。もっと深くてもっと歯ぎしりするくらい切ないのが、韓国的な情緒で、静かな諦念と弱さが感じられると日本的、のように私は捉えてるわけですが。。

ハンター少年が、まだ7歳なのに大人のように喋るのがなんとも言えない魅力で、その一方で、弟の妻アンヌの舌ったらずの英語も印象的。なんなんだろう、この大人と子供の倒錯感。

パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]

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