映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ポール・トーマス・アンダーソン監督「インヒアレント・ヴァイス」1545本目

移動しないロード・ムービーみたいなものかな。
起承転結がなくて、起承転承って感じに流れていきます。
その中心にいるホアキン・フェニックス演じるドックは髭面の長髪、ひたすらロレツが回らないジャンキーです。私立探偵と名乗っても、冗談にしか見えません。元カノはキャサリン・ウォーターストン演じるシャスタ。可愛い!こんなに可愛ければあとはもうどうでもいいです。
ドックは彼女に引っ張られてなにかの罠に落ちて行くんだけど、それを解決してカタルシスが得られる映画ではなく、まだ死んでないみたいだな、じゃあまたドラッグでもやるか、という日々が続くのです。

多分ドックとシャスタは、夢から覚めたくないんだ。
不安というか、悪い予感はたっぷりあるけど、漂ってるまま気付いたら死んでる、くらいの人生で十分だと思ってる。シリアスになりたくない。がんばって大金持ちになんかなりたくない。

変なの〜。と思うけど、なんかこれはこれでいい気もします。映画としていいのか悪いのか、評価をするのは難しいけど、割とこういう「なんとなく」が描かれてる映画は好きです。