映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

今敏監督「妄想代理人」1581本目

2004年にWOWOWで放送されたオリジナルアニメ。25分x12回分が6枚のDVDになっていてレンタルもしてるのですが、「KINENOTE」としてはこれは「映画」じゃないので、ここだけに感想を上げます。

TVで放映されたアニメの歴史をひもといてみると、例えばエヴァンゲリオンの初回放送が1995年、「AKIRA」は1998年。「千と千尋の神隠し」が2001年。「君の名は」でメジャー化した新海誠が「ほしのこえ」を作ったのは2002年。今監督自身の作品では、2002年の「千年女優」と2006年の「パプリカ」の間。だいぶ時代のイメージを思い出してきました。

(以下感想。ネタバレ多し)
うん、良かった。平沢進の音楽でぱーっと始まるオープニング。どあたまに月子が靴を両手にビルの屋上に立ってへらへら、ゆらゆらしてる映像があるので、その場面が本編中にあるのかと思ったらなかった。復興中の東京で月子は髪を短くして普通のOLさんになっていた。

こういうメタメタ構造のお話って、画面の方から観客が見られてるような、ハッとする瞬間がちょいちょいあって、観客が中身に集中しすぎて頭に血が上りそうになるのを抑える効果がある。
勧善懲悪の時代のあと、悪って何?の時代を経て、そもそもアニメって何?という時代の作品、なんだな。
今監督の作品は、女の子そこそこ可愛く、それ以外のキャラの個性も強くて、人間がみんなチャーミングだよね。
無理やり一言でいうと、死んでもOK。殺してもOK。アニメでも作り事でも、みんな大丈夫。最後は全員安らかな眠りにつける。・・・そんな感じの、大きな人類愛のような明るさがある。

順番に見てるときは、10話(制作が遅れがちな関連アニメを作り続ける幕間劇)は予定より話数が多くなって困って無理に作ったお話かなーと思ったけど、最終話を見ると、このメタメタ構造の予告編(夢告?)だったのかなと思う。

とてもよかったけど、このDVDは欲しいと思わないな。なんでだろう。冒頭と最後の歌の部分だけは欲しいかも。