映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アラン・レネ 監督「二十四時間の情事」1586本目

1959年、日仏合作映画。
ずーーーっと見たかった作品。ツタヤの宅配レンタルでは扱ってないけど、店舗にはあったので借りてきました。
なんで見たかったかというと、すごく好きな映画「愛、アムール」の老夫婦の妻の方がこの主役のエマニュエル・リヴァだから。彼女のデビュー作だから。私がよく見る反戦映画だから。舞台が広島で相手役が岡田英次だから。原作が「ラマン」のマルグリット・デュラスだから。「去年マリエンバードで」のアラン・レネ監督作品だから。
「愛アムール」でも、認知症が進む前の彼女は闊達として本当にチャーミングですが、この映画の中の彼女はむしろアヌーク・エーメみたいに色っぽく、知的な女性です。ちょっとだけイメージ違う。

冒頭からしばらく、原爆被害のリアルな映像が続きます。彼女も彼も戦争の黒い影を自分の中に持っています。
一度だけの情事のつもりが、二人は再会して広島某所(もうどこでもいい)で逢瀬します。戦時中のかなり悲惨な思い出(敵の兵隊と付き合った女性は丸刈りにされた…ってエピソード、他の映画でも見たことがある)。戦争の凄惨さと、性愛の甘さ美しさ。アラン・レネ監督の作品の二大ファクターがこの映画では両方とも表現されている、という稀な作品です。

そういう面からも、エマニュエル・リファは地下室の丸坊主から異国の美人女優までそうとう幅の広い役を力一杯演じていて素晴らしいです。戦時中の複雑な恋愛を、はるか彼方の国のみじかいロマンスに重ねる。はるか彼方の国だからそこでだけ正直になれる。マルグリット・デュラスの作品って全部自伝のように思えるんだけど、彼女は実際にこういう思いをしたんだろうか。

二十四時間だけでもいいから、誰かにこんな風にぎゅっと抱きしめられてみたい。
愛される人と愛されない人って何が違うんだろうね。

二十四時間の情事 [DVD]

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