映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ダニエル・マン 監督「八月十五夜の茶屋」1589本目

1956年のアメリカ映画。
マーロン・ブランドが、「クラウド・アトラス」のジム・スタージェスのように二重まぶたを一重に見せかけて日本人役を演じる(!!)という、珍品中の珍品。
新宿のツタヤで奥からVHSを出してきてもらったら、店員さんが(こんなの借りる人本当にいるんだ・・)って苦笑いしてた気がします。私も、わざわざコンポジットHDMI変換器を買ってきて4Kテレビで見られて感無量です。意外と画面キレイですよ。

で沖縄の通訳の日本人役のマーロン・ブランド、意外なことに日系人くらいには見えます。見た目だけじゃなくて話し方も、巻き舌を使わない日本人ふう。そしてグレン・フォードvs京マチ子、最高。沖縄にもこんなゲイシャは絶対いないけど、コメディエンヌだなぁ〜。

踊りは一流で、ニセモノのゲイシャではない、本物の日本舞踊を披露してくれます。

すっかり村に染まった軍曹を診察するためにやって来た精神科医が、実は園芸マニアで、化学肥料はダメだ有機農法を試すんだと主張するあたり、まるで2000年代のアメリカのようで不思議とギャップを乗り越えて響きます。

「軍服はどうしたんですか」
「あんな窮屈なもの着てられるか、それよりキモノだよ」
「でも軍曹、あなたが着てるのはキモノじゃなくてバスローブです」
嬉々としてバスローブに沖縄風の笠をかぶった、キテレツな出で立ちの大尉とゲイシャ・京マチ子・・。
軍医もいつの間にやら短いキモノと笠。そこに日本人風メイクのマーロン・ブランド・・・。
みんなで泡盛工場を建てて一儲け・・・
って世紀末か?

軍人さんたちが誰も命令を守らないで好き勝手やってるあたり、こう見えて反戦映画なのかもしれません。
戦後沖縄は長い間、アメリカだったわけですよね。ハワイに行くのもグアムに行くのもオキナワに行くのも、アメリカ兵にとっては同じ意味だったのかもしれません。ちょっと辺境だけどいいところ、くらいのイメージだったのかな・・・。

この映画ひょっとしたら、2017年の今いちばん新しくて面白い映画かも。マジで。


八月十五夜の茶屋 [VHS]

八月十五夜の茶屋 [VHS]