映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

野村芳太郎監督「事件」1612本目

激情型(劇場型?)姉妹の悲恋物語にもできる題材だと思うんだけど、とても硬質な法廷ドラマとなっています。
新藤兼人の脚本が締まってますが、彼自身が監督したら、多分もう少しほろりとくるドラマになったんじゃないかな?
年齢を経た男女でなく、あえて20歳そこそこの若い男女を主役にして、どんな人にも存在する人間の愛憎の本質を冷静に描いた秀作だと思います。

1978年というとおよそ40年前。初々しかった大竹しのぶも永島敏行も今は60台。脇を固める丹波哲郎佐分利信芦田伸介西村晃北林谷栄森繁久弥、渡瀬 恒彦らはもう故人です。本当にいい役者さんが揃ってますね。この頃って映画にとっては幸せな時代なんじゃないかなぁ。

<以下ネタバレ>
被告側弁護士の辣腕のおかげで刑期は比較的短く済んで、観客は少しホッとしますが、服役する彼の記憶を追体験し、罪の意識による憔悴ぶりを見ていると、何が幸せなんだかなぁという気持ちになります。一方の「妹」の無邪気な図太さに圧倒されます。常に率直でひょうひょうとした渡瀬恒彦に救われますね。

あの頃映画 「事件」 [DVD]

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