映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

イングマール・ベルイマン監督「恥」1648本目

1968年の作品。
マックス・フォン・シドーとリヴ・ウルマン、そろそろ私も見慣れてきました。
戦争のため楽団が解散して島にこもった演奏家夫婦が、戦乱に巻き込まれてしまう。戦闘機から降りてきたパラシュートを見に行ったことで敵に通じていると疑われ、収容所に連れて行かれ・・・。なんとか戻ってこられたけれど、町中に、収容所内に、死体があふれていた。

気弱な夫は、生き延びるためなら、追い詰められれば、引き金を引く。
お人好しの妻は、好きではない男と納屋の奥にこもる。
戦争がなければ子供を作って、平凡に静かに暮らせたのに、戦争が、彼らを・・・・、変えたんじゃなくて、彼らの奥に隠れていたものを引き出してしまった。一生表に出さなくてもよかったもの。

操縦もできず流される船の中で、誰ももう希望も恨みもなく、ただ夢をみるだけ。

こんな悲惨な戦争をスウェーデンが経験したんだっけ?第一次大戦にも第二次大戦にも参戦しなかった、大きな内戦もなかったと思っていた国の人が、こういう映画を作ると思わなかった。でも響きました。
なんとなく、白黒の無駄のない映像や感情を抑えた演出が、新藤兼人の映画に近いなぁと思いました。