映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

シドニー・ルメット 監督「狼たちの午後」1673本目

1972年夏に実際に起こった事件を1975年に映画化したもの。
こんな素顔さらしまくりの、名前呼びまくりの、素人まるだしのスカスカな犯罪があるのか?という間抜けさが、緊張で凍っておかしなことになっている。

Blu-Rayに監督自身の解説が入ってて、なかなか面白いです。俳優たちはみんな自前の服を着てきて、普段の自分を演じるよう言われた。リハーサルでアドリブを言うと、検討してそれを脚本に組み込んだ。
私も秀逸だと思ってたセリフ。ソニーに「どの国に行きたい?」と聞かれてサルが「ワイオミング」。「ワイオミングはアメリカだよ」・・・ジョン・カザールのアドリブでアル・パチーノはかなり動揺したらしい。このエピソードだけ見ても、ジョン・カザール素晴らしいです。

ジョン・カザールについて語るときに参照される作品のようです。
この俳優、私は今までノーマークでしたが、なんというか、俳優と思えない。彼が今そこにいて犯罪を目論んでいる。悪い意図を持っている顔だ。だけど不慣れで緊張している。だけどやり遂げなければならない、現実だから。
彼の演技は、見ていて緊張する。ちょっと嫌な気分になる。それくらいリアルってことなんだろうな。

アル・パチーノは本当に人を惹きつける人だな。しくじっても目が輝いてる。
集中型で、おそらく誰の話も聞かずに自分の世界の中で演技をするところが、、、キムタクって似てるよね?似てない?(キムタクはセリフが聴きづらいけど)

なにごとにも、まだ”アソビ”があった、古き良き時代のアメリカの映画。

狼たちの午後 [Blu-ray]

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