映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フランクリン・J・シャフナー 監督「ブラジルから来た少年」1904本目

1978年のイギリス映画だけど、日本で劇場公開はされてないらしい。

出演者みんな強い英国アクセントで、すごく英国的な映画です。そして、グレゴリー・ペック62歳、ローレンス・オリヴィエ71歳、ジェームズ・メイソン75歳といった往年の大スターたちの共演。こんな配役ができた最後の時代だったのかもしれません。

派手なCGもカメラワークもないけど、全員の演技が実にうまくてじわじわとリアル。BBCが作ったサスペンスドラマみたいに、スリリングですごく面白い。こういう作品に出会えるから、全く知らない映画をテレビで見るのも大事だわ。

グレゴリー・ペックは大柄でがっしりしてるんだけど、ロマンチックで優しい「ローマの休日」の風貌とは打って変わった悪辣さ。なんだか別人のようだけど、迫力があります。ローレンス・オリヴィエは若い頃はすごく精力的な感じだったけど、優しく枯れています。ジェームズ・メイソンも柔らかくなったなぁ。年を経て変容した名優たちの姿を見るだけでも価値があります。

ペック演じるナチスの医師メンゲレと、彼を追うリーベルマン(ローレンス・オリヴィエ)の死闘もすごい迫力です。ドーベルマンの群れもすごい。少年たちの青すぎる眼(カラコンだろうな)も、夢に出そうなくらい印象的。

おっと!そしてこの原作、悪夢的傑作「ローズマリーの赤ちゃん」の原作者でもあるんですね。幅広い才能。

 いやー面白かった。こういう映画を見なきゃね!

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