映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ハル・アシュビー 「さらば冬のかもめ」1905本目

1973年の「ニュー・アメリカン・シネマ」。

KINENOTEのビジュアルのジャック・ニコルソンは、まるで「Tom of Finland」。

彼がゲイって設定はなかったよね??

お金を”盗もうとしただけ”という軽罪で8年もの刑を受けてしまった、まだ少年のような海兵メドウズを護送するのが、ニコルソン演じるバダスキーとオーティス・ヤング演じるマルホール。最初は真面目に仕事してるように見えたのに、気がつくとみんなでビールを飲んでいたり、念仏を唱え始めたりして、おかしな様子。何しろ罪が人道的に見てあまりにも軽いので、見てるこっちもなんだか気楽です。

(羽目を外しすぎると、ニューシネマは最後にひどい目にあうぞ・・・と、ついうがった見方をしたり)

一貫してあかるい映画なのですが、子供のように人の良い、まだ女性も知らない兵士が、ちょっとした失敗で転落への一本道に巻き込まれそうになっているのが、理不尽に思えてきます。未成年だし未遂だし、シャバにいたら8年も食らうような罪だと思えない。これから彼を戦争へ送り出す兄達みたいに、売春宿に連れて行ったり、悪い遊びを教える彼ら。この坊やは刑務所生活をやり抜けるんだろうか?出所後、自力で生きていけるんだろうか?

恐怖にもオカルトにもミステリーにも傾かず、あくまでも目に見える、手で触れる現実を描いた映画でした。

 

さらば冬のかもめ (字幕版)

さらば冬のかもめ (字幕版)