映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピーター・グリーナウェイ 監督「コックと泥棒、その妻と愛人」1934本目

この映画の評判を当時聞いた覚えもあるんだけど、不思議と見ないまま来ていました。

どれだけ悪趣味かということは、すでに見た人の感想とかでだいたいわかってたし、映画の中でもちゃんと時間をかけて語られるので、お化け屋敷の作り物みたいな気持ちで冷静に見ました。

人間よりむしろ、食肉にされる家畜とはいえ、動物の支隊が累々と並ぶ殺戮映画だなぁとも思います。家畜を食することをグロとして描くことこそ悪趣味だ。感謝して押し戴いてほしいです。

<ネタバレあり>

アクの強い大泥棒を演じているのは、今や賢明なダンブルドア校長となったマイケル・ガンボン。確かにこの顔だ、シェークスピア俳優みたいな。妻が毅然として戻ってきた瞬間、「何事もなかったようにやり直そう」と言ってみたり、変わり果てたマイケルの前で単なるビビりになってしまうあたり、つまんない男だね・・・。

ヘレン・ミレンは若くて清潔な感じですね。すっかり貫禄のある今の姿の方が馴染みがあります。しかし愛人マイケル役アラン・ハワードは地味すぎないかしら・・・。ティム・ロスはいつもの、つかみどころのない愛嬌がやっぱりいいです。

で、この映画全体のことをいうと、ホドロフスキーみたいな本物の変態(失礼)と違って偽悪的で、「気色悪さを狙いつつ、今時っぽいスタイリッシュさにもこだわる」感じが普通でした。

コックと泥棒、その妻と愛人 [DVD]

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