オーソン・ウェルズの、オーソン・ウェルズによる、オーソン・ウェルズのためのオーソン・ウェルズ劇場なのですが、独特の古めかしい耽美の世界があって一種の美しさがあります。でも彼の美学は見た目に徹底的にこだわるというより、リタ・ヘイワースという当時の美人アイコンと自分をモチーフににした、ハードボイルド的な世界。
逃亡中に目覚める遊園地の一室は、名作「カリガリ博士」みたいですね。オーソン・ウェルズきっと「カリガリ博士」見てただろうなぁ。
ストーリーは、それほど複雑じゃないものをひねってひねって複雑にしたようで、なかなか映画の筋が追えない私には難しかったです。
DVDの特典に、ピーター・ボグダノヴィッチ監督による解説が入っててびっくり。「ラスト・ショー」とか「ペーパームーン」とか彼の作品は私好みなので、その監督がオーソンウェルズ評論家というのは意外です。そして、リタ・ヘイワースがオーソン・ウェルズの妻だったと聞いてまたびっくり。知らなかった!
この映画は、私としては、ウェルズとヘイワース以外のアクの強い俳優陣の方に惹かれました。
「上海から来た女」がサンフランシスコのチャイナ・タウンで倒れるってのも、できすぎててウェルズ監督っぽい気がします。ゾワっとする神秘、謎、の感覚が楽しめる作品です。