新藤監督95歳のときの作品。
「午後の遺言状」は好きだけど「一枚のハガキ」はキツかった。この映画もそれに近いものがある。トヨエツと大竹しのぶは小さい頃の二人と容貌が違いすぎるし、だいいちちっともお似合いに見えない。
子どもたちが声を合わせてわ〜っと賑わったり、いちいちアクションが大きいのを見ると、不自然だろうがどうしようが、これは監督の中で50年以上醸成された、幼い頃と同窓会の記憶が、寓話へと昇天してしまった世界・・・なんだろうな、と思う。
どこまで事実だったんだろう。もしかしたら、初恋の人と同窓会で再会したことだけが事実で、あとは全くの妄想だったりしてね。はっきり言って、95歳にもなれば、50年前のことが事実か虚構かなんて、どっちでもいいのだ。この映画も、最初はテンポが今の自分と違いすぎてツラかったけど、それももうどうでもいいのだ。この映画は、95歳まで生ききったら人間はこういう領域に達するんだということを、後輩たちに伝える意義がある。
監督は今ごろ天国で、先生夫婦を囲んで、おそらく全員がもう鬼籍に入った同級生たちと、愉快な酒でも酌み交わしてるのでしょう・・・。