映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

和田誠監督「怪盗ルビィ」1712本目

とても可愛い映画でした。犯罪映画(笑)なんだけど、ジュブナイル小説みたいで少年少女に見せたくなる。
小泉今日子は確かに可愛いんだけど、彼女のファンだからじゃなく、この頃のキョンキョンにしかない、身勝手で無邪気な女の子らしさが、なんとも言えず可愛いです。ほとんど素じゃないか?

真田広之は、地味で小心者だけどどこか呑気で楽しい青年。とことん、不器用な男を演じてるんだけど、洒落っ気のあるところがちゃんとチャーミングでもあります。しかし、その他にも随分豪華キャストだなぁ。天本英世高見恭子吉田日出子斎藤晴彦岡田眞澄木の実ナナ陣内孝則冨士眞奈美秋野太作名古屋章。映画はわずか96分、このキャストもみんな一瞬だけの出演なのにね。

画面の感じも、オリーブのグラビアページみたいにオシャレでカラフル。とてもいい映画だと思う。80年代のオシャレってこういうものだったなぁ、という記録映画のようだ。ミントグリーンのネオンのカフェバーや、ガラストップのテーブルがある部屋がオシャレだった時代。
なのに、さらに私は妄想してしまいます。この映画、この頃のキョンキョンを主役に、ミシェル・ゴンドリーに撮ってほしかった!

セリフや設定も気が利いてるんですよね。
水野久美演じる母は、夕食のテーブルの前でいつも息子に待たされてる。
伊佐山ひろ子演じる会社の先輩は、デートの誘いをいったん受けたのに、「実は先約がありまして」と断ってきた彼に「そう・・・先約ってあとでわかるものだっけ?」
和田誠のイラストの世界だなぁ。一瞬しか出てこない人たちの普段の物言いとか立ち居振る舞いまで、あらかじめできてるから、そういう一場面がキラッとする。

問題はね、泥棒を(いちおう)本格的に試みておいて笑って済ませるには、ちょ〜っと彼らは大人すぎるよね。この二人が中学生なら、いまのご時世でも許されるかな。泥棒の下調べだけ、やけに細かくできてるわりに、まるで実際は腰抜けなのは、はなから本気じゃないってことだよね。ルビィは想像力豊かな女の子で、マジメそうでちょっと素敵な男の子を見つけて、ちょっとからかってみたいと思ったんだな。

ルビィの堂々とした物言い、図々しい可愛らしさ。こんな女の子に、こんな風に振り回されて、恋をしてみたい。。。というのは、男のロマンなのかもね〜〜。